「自分を大切にしよう」と決意した 永田カビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』
試し読みの時点で、泣きそうになりながらも、表紙とタイトルのインパクトから、なかなか買う勇気がなかった。
それから、私には作者と似ている部分があり、彼女が自身の心のモヤモヤを可視化すると、私も心を抉られるからという理由もあった。
でも、ずっと気になっていて、同じ作者の「一人交換日記」(pixivコミックで連載中)を読んだ。そうしたら、「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」の方も、やっぱり読みたくなった。
「電子書籍版」があることに気付き、ようやく念願叶ったのである。
※「レズ」という言葉は、差別的なニュアンスを含む表現ですが、「レズ風俗」という名称で定着しているようですし、作中の表現を尊重したいと思います。
どんな話?
あらすじはというと、タイトル通り、作者が寂しさのあまり「レズ風俗」に行くという、非常にシンプルなものだ。
しかし、一般的なレポ漫画と違うのは、「レズ風俗」という結論に至るまでの過程を重視しているところだ。
この点で、評価が分かれるだろう。
「若い女性」が「レズ」の「風俗」に行くという題材は、どうしても好奇な目で見られがちだから。
「アブナイ場所に潜入!」的な、興味本位のレポではない。
「とにかく抱きしめられたい」「受け入れられたい」という、(主に母親への)願望への代償行動なのだ。
この本で描かれるのは、作者の成長である。
「レズ風俗」に行くことを決心した時点から、彼女は変わりはじめる。
自分で自分を大切にしたい
自分の気持ちをわかるようになりたい…!!
自分を自分で大事にしていた方が
色々効率も良くて 自分にも他人にも良いのに
今までずっと できていなかった
作者は、「世間から取り残されてしまった人間」の心の機微を表現するのがうまい。
だから、共感できるが、その分ダメージも大きい。
夜中に嫌な過去思い出して、わーってなる感じ。
でも、作者の成長を見て、私も「自立したい」と感じた。
この作品を読んで考えたこと
自分で自分を大切にしよう
「空気を読め」という言葉はよく聞くし、相手の顔色を窺って生きるというのは、一見良いことのように見える。
見た目を綺麗にし過ぎたり、目立ったりすると、悪口を言われやすい。
では、逆に、見た目に全然気を遣わなかったり、埋没していたりすれば、評価は上がるのか?
いや、むしろ下がるだろう。
他人の評価を人一倍気にかけているのに、「わがまま」だと言われるだろう。
作者は、「家族」というより、「家族に評価されたい自分価」に縛られていたと語っている。自分の想像なのだから、本当に家族が求めていたものとギャップが生じるのは、しかたのないことだ。
また、体調や環境など、自分の努力だけでは、変えるのが難しいものもある。
そもそも、「他人の期待通りに生きる」なんて、不可能な話なのだ。
↓この本もオススメ
自分を一人の大人だと認めよう
作者は、「家族(特に母親)からどう見られるか」に囚われていた。
そして、自分を「親に甘える子供」扱いしていたことに気付く。
親にとって、自分の子は、いつまでも「子供」なのだろう。
だけれど、社会から見れば、「一人の大人」だ。
お金を払いさえすれば物を買えるし、契約も結べるし、結婚もできる。
たいていのことは、自分の意思でできるはずなのだ。
「子供への愛情」とは別に、世の中には、子供に「子供」でいてほしい親と「子供」でいたい子供がいるのだ。作者や私のように。
うまくいっている間はまだいいのだろうが、そうでなくなった時や、子供が社会に出た時に、問題が生じやすい。健全な関係とは言い難い。
精神的に成熟する年齢は人それぞれなのだろうが、「巣立ち」は必要だと思う。