ひとりぼっちのイルカ
イルカのドキュメンタリー番組を観た。
アイルランドで暮らす人類学者のヤン・プローグは、海岸に出入りする野生のメスのイルカ・ダスティと交流している。
彼のダスティに関するブログは、多くの人に読まれているそうだ。
「私は、イルカの研究者ではないので、なんでも自由に書けます。気楽で良いですよ」と語る。
2009年10月、ダスティは妊娠した。
12月、生まれて間もないイルカが、海岸に打ち上げられ、ほどなくして死んでしまう。
その土地のイルカは、通常、7~8月に出産するが、ダスティは群れに属さないため、他のメスが出産する様子を見ていないのだ。
「あくまで私の推測ですが」と彼は前置きした上で、続ける。
ダスティは、群れの中で断トツに頭が良かったのでしょう。人間の社会でも、抜きん出た者は、はみ出し者になりがちです。おそらく、ダスティも群れから追い出されたか、自分から離れていったのでしょう。イルカは社会性の高い動物ですが、ダスティはひとりで15年間も生き延びてきました。非常に賢い証拠です。
イルカと人間との交流を微笑ましく観ていた私にとって、このエピソードは衝撃的だった。
賢さゆえに、一頭でも生き延びたダスティ。
しかし、賢さゆえに、群れに馴染めなかった。他のイルカの様子を知る機会が乏しかったために、子を失ってしまう。
つい、自分の経験と重ねてしまう。
賢ければ、一人でもなんとかやっていけるのだろう。
でも、社会で生きていくには、賢さより「周囲とうまくやっていくこと」の方が、大切なのだろう。
もともと、イルカは好きなのだが、番組を観終えて、ヤン・プローグのように、イルカと交流しながら、静かに暮らす生活が羨ましいと思った。