近藤ようこ『鬼にもらった女』
著者の作品を読むのは、宝の嫁 、五色の舟(作画)に続き三冊目。
既読の二冊より、アングラな印象。
結末はそれぞれだが、どの話も切なさがあり、読後に余韻が残る。
特に、「美男蔓」と「残された女」という話が印象的だった。
「美男蔓」は、コミカルな話。
あらすじ
長者の姫が縁談を断り続けるのは、幼い頃に助けてくれた美男子が忘れられないから。
商売っ気たっぷりの旅の山伏は、長者の人探しの立て札の前で、ため息をついている青年に声をかける。実は、彼こそが姫を助けた男なのだが、とても美男とはいえない容姿。姫の思い出は、美化されていたため、名乗り出ることができずにいたのだ。
そこで山伏は……
落語っぽいノリの話で、楽しく読めた。
この話とは対照的に、後味の悪さが残るのが、「残された女」。
あらすじ
体調を崩した身重の妻とその夫は、老婆に声をかけられ、彼女の寂れた屋敷で一夜を過ごすことになる。
そこで、屋敷にまつわる話を聞く。
美談の裏では……。
一度日陰者扱いされてしまうと、覆すのが難しい。それに、自分を追い込んでしまい、更に悪い結果を読んでしまうこともある。
最後に夫が、「哀れな――」と言うのだが、まさに「哀れ」としか言いようのない話。
歌舞伎の「東海道四谷怪談」も、こんな話だったような……数年前に、授業中にビデオで観たきりだから、うろ覚えだけど。
一般的なお岩さんの怖ろしいイメージとはかけ離れていて、驚いた気がする。
大団円のハッピーエンドも好きだけれど、こういう日陰の人間の話にも惹かれる。
ミュージカルの「Wicked(ウィケッド - Wikipedia)」も、そんな感じの話だったような……ポスターであらすじを読んでから気になってる。
物語には、きっかけになる人がいるものだけれど、そういう人たちを無視して、主人公の周囲だけハッピーエンドなのもどうかと思う。
「鋼の錬金術師」のキメラの話は、ほろ苦さが残っていい。
別の話で「臈(ろう)たけた」って言葉が出て、意味が分からなかったから調べてみた。